中米パナマへの進出-パナマになぜ多くの外資が拠点を構えるか-長所・短所

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パナマ進出の長所・短所 All rights reserved by onegai kaeru
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弊社は現地の法律事務所の窓口として、パナマの法人登記、パナマ船籍登録、進出コンサルをして10年近くとなりました。

 

パナマへの飲食業での出店の相談がいくつかありましたので、パナマの国としての概要、パナマの保税区・経済特区、進出している有名企業、パナマ市場へ進出する長所・短所について概括いたします。 

 

昨今では、パナマ文書にて一躍有名になったパナマですが、それまでパナマのことをご存じなかった方が多いのではないでしょうか?

 

1983年のヴァンヘーレンの曲「Panama」で、その響きだけはしっているかもしれませんが、現地の友人によりますと、「あれは、アメリカ合衆国フロリダ州のPanama City beachだよ」と教えてもらいました。

 

パナマの国の概要としてましては、古くから世界の海上交通の要衝であり、民主主義や法の支配、自由主義経済が概ね定着し、政治的に安定しているパナマは、昨今では、パナマ運河や免税地帯であるコロン・フリーゾーン(コロン保税区(Colon Free Zone(通称CFZ)))とPanama Pacifico特別経済区を中心に物流・輸送サービスを発展させ、グローバル化の中で高い経済成長を享受しています。

 

日本はパナマ運河の世界第4位の利用国(上から米国、中国、チリ 2017年現在)であり、コロン・フリーゾーンにも日系企業が多数進出しているほか、パナマは日本にとり中南米第一の輸出相手国であるなど経済関係は緊密であります。便宜地籍船として、パナマ船籍は世界でも有数の人気国です。

 

パナマ共和国(Republic of Panama)は、2015年 世界銀行データによると人口約393万人、国土は75,517平方キロメートル、主要言語はスペイン語ですが、英語も通じます。GDPは、521.3億ドルで、一人当たりにすると13,268ドルとなります。所得格差の高い国ですので、ごく少数の大金持ちと、多くのそうでない人々が市場を構成します。経済成長率は、6%です。首都は、パナマシティー(パナマ市、Ciudad de Panamá)で、都市部の人口は150万人を超え、総人口の40%ほどになります。

 

ゴールドマンサックスのBRICsリポートによりますと2050年における世界の巨大市場は中国、米国、インドそしてブラジル及びメキシコになると予測されております。将来的に高い経済成長が望めるラテンアメリカへの重要拠点としてのパナマがあります。パナマの中心に近いコロン保税区は世界で二番目に大きな保税区であり、主にヨーロッパ及びアジアなど世界中からラテンアメリカ市場への物流拠点としての重要な役割を担っております。

パナマの保税区・経済特区

コロン保税区 パナマ進出支援
コロン保税区 Source: Wikipedia

コロン保税区とPanama Pacifico特別経済区への具体的進出方法について質問を受けますので、少し説明します。

 

コロン保税区

アメリカ大陸で最大の保税区。1948年から運営しているパナマを代表する保税区です。コロン保税区は、広い倉庫街(見本市を兼ねたところもあります)で、入るにはパスポートが必要です。個人でも法人でも借りられます。法人の場合は20年の賃貸契約を結ぶこともできます。

 

Panama Pacifico特別経済区

Panama Pacifico特別経済区は、トクメン空港(パナマの国際空港)から40分、パナマ運河から車で10分のところに位置し、高付加価値の製品製造・サービス拠点のために設立されました。約100社の外資系(特に海運、物流、コールセンター、銀行)が参入しています。進出企業は、DELL、BASF、キャタピラー、3Mなどが進出中。

 

PanaPark保税区

パナマ及びベネズエラの組織によって設立されました。PanaPark保税区は、53ヘクタールに物流、貿易、生産拠点並びに商業及び住居エリアを有します。首都パナマシティの東側に位置し、トクメン空港(パナマの国際空港)からメトロLine2の近くです。

パナマ進出の長所

そんな、パナマ市場進出の長所について記述いたします。

高い経済成長率

パナマシティーの不動産ブームに牽引されパナマは近年高い経済成長を遂げております。パナマは不動産以外にも、その地理的な利便性、観光といった観点からも多くの事業チャンスがあることはあまり知られておりません。太平洋と大西洋の両方に面した立地で、大西洋に隣接するカリブ海側はリゾート地としての可能性を秘めております。自身何度か足を運びましたが、波が強く、少しにごった様な太平洋側に比べ、カリブ海側は綺麗に透き通り、周りのジャングルとあいまって「ザ・リゾート」という穏やかな海です。 

ラテン市場への戦略的立地

パナマの外資系企業といえば圧倒的に米国企業が多いのですが、大手日系企業をはじめ韓国、中国(台湾など)といったアジア企業が多くの進出していることに驚かされます。パナマシティーでは、日本からの駐在の方々も見かけます。 それほどまでに外資系が進出している理由は、ラテン市場への物流網の拡充とアクセスの良さがあります。

パナマ政府の外国投資優遇策

パナマは、国のサイズ、資源が限られていることから、ブラジルに比して、外資系への規制は低い国となります。

 

そして、パナマ国外で事業をいとなまれる外資系企業の場合、その収益についてはパナマにて税金を支払う必要はございません(こちらは、パナマ国では合法ですが、外国当局との関係上、リスクがございますので、しっかりとした税制対策が必要となります)。

 

このような優遇策により、外国企業はパナマにおいて迅速かつ効率的にラテンアメリカ市場の拠点を立ち上げることができるという背景があります。

 

2012年には、米国ニューヨークFitch Ratingsがパナマシティーを「BBB」に格付けするなどパナマの経済についてはその安定性が認められています。そして、パナマは開かれた金融の中心であり、約60の銀行が存在し、その多くが国際的に認知された銀行です。現地通貨バルボアと並行して使われる米ドルで口座が開ける銀行もあり、ユーロでの口座開設も可能です。タックスヘイブンとしてのイメージのあるパナマですが、OECDは、パナマをタックスヘイブンリストから外しております。ただし、パナマは多くの税制優遇策をとっているためOECDのオフショア金融センターリストに位置づけられております。

 

パナマペーパーであれだけ騒がれたのも、世界のあらゆる一流企業がパナマに法人を有していたからに他なりません。つまり、ラテンアメリカの中では外資とし最も参入がし易い国のひとつとなります。

パナマに拠点を持つ銀行

パナマに拠点を有す日本の企業(三菱商事、日本郵船、パナソニック、トヨタ、東芝、タダノなどなど)は数知れませんが、もっともお堅い銀行業にスポットをあってて見ます。

 

スイスに次いで世界で二番目に大きな金融機能を有すパナマには、約100社の銀行が拠点を置いています。例えば、Citibank, HSBC(2013年以降はBancolonbia), International Commercial Bank of China, Banco du Brasil, Societe Generale, Banque Sudameris, BBVA, Metrobank, Banco General, Global Bank, Multibank, Banco Aliado, BancoLat, BIPAN, Bank of Nova Scotia (Scotiabank), Banvivienda, Credicorp Bank, Towerbank, Balboa Bank & Trust, Cayman National Bank, Credit Andorra, Andbankとなります。

 

かつては日本の銀行もパナマに支店を構えていましたが、現在は、三井住友銀行がニューヨーク支店の出張所として、コロンビアのボゴタに拠点を構え、パナマを含む中米をカバーしています。パナマへの事業へはみずほ銀行が積極的に融資しています。

パナマ進出の短所

労働規制

社内の90%以上はパナマ人を雇う必要があります。特殊技能の社員の必要など例外により、15%までパナマ人でない外国人を雇うこともできます。但し、先述のPanama Pacifico特別経済区では15%を超えることも可能です。

 

イメージ

パナマに進出する短所につきましては、パナマ文書の話題から、パナマに拠点をかまえることでのイメージの悪化は否めません。

 

但し、税金優遇策をとっている国はパナマ以外にも数多く存在します(米国内にもデラウェア州のように税金優遇策により、多くの企業の米国拠点が集中している州もあるくらいです)。パナマ文書から明らかになった世界各地にあるタックスヘイブンを利用して、税金逃れをしていた企業、個人の問題であり、パナマ市場の魅力やパナマへ進出する意義は以前として高いと感じます。実際、文書の公開後も、パナマ市を歩いても特に人々の様子も変わっていません。  

ラテンアメリカ進出の短所

法的な外資規制が他国と比べて少ないパナマですが、以上以外の短所は、ラテン地域、熱帯地域特有であり、他のラテンアメリカ地域や東南アジアと同様です。

 

事業スピード

事業のスピードは日本に比べると驚くほど遅いことがあります。日本ではメールが1,2日で返ってくることが多いですが、ラテンアメリカでは、一週間、しかも、こちらの質問に答えてくれず、さらに、一週間待たされるといったこともよくあります。 

 

言語

言語は、日本語ができる人材は限られます。知識層・富裕層は英語ができますが、それ以外の多くの人は母国語であるスペイン語となります。

 

国民性

 

仕事のペースは遅くなります。リーダーシップのある人材を、マネジャーとして採用できるかがキーとなります。

変わらぬパナマの魅力

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ラテンアメリカ(南米市場)には欧米企業が早くから進出していましたが、その経済の発展とともに日本や中国その他のアジアの企業の関心が年々高まっております。ヨーロッパ市場にとってのアイルランドが、そして、東南アジア市場にとってのシンガポール及び香港が、地理的・租税面から利便性からハブであるのと同様にパナマはラテンアメリカ市場の重要なハブであり続けるでしょう。

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出展:外務省 政府開発援助(ODA)国別データブック 2013

 

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Comments: 1
  • #1

    武田 (Friday, 21 July 2017 22:53)

    海外進出で、いつもお世話になっております。ラテンアメリカ事業の件も宜しくお願いします。