タイでは、100%外資の会社設立にあたって、外国人事業許可(Foreign Business License (通称、FBL))の取得が必要になります。当該許可は、商務省 (タイ語:กระทรวงพาณิชย์、英語:Ministry of Commerce)から取得するのですが、手続きが煩雑で取得までに数年かかることもあります。
このFBLを取得しなくても、外国人は会社を設立することができます。その場合について以下説明します。
外資企業でも、タイから国外の顧客向けの製品、サービスを提供する場合はFBLは不要で、登録も比較的安易です。
工業省の管轄庁であるタイ投資委員会(通称、BOI。タイ語:คณะกรรมการส่งเสริมการลงทุน タイ略称บีโอไอ、英語:The Board of Investment)から承認を取得した企業は、FBLの取得手続きの短縮又は免除を受けられる可能性があります。
アジア本社など地域本社の位置づけでの申請し、タイ国外の子会社の管理業務のみを業務とする会社は、FBL取得が免除され、また、ラテンアメリカ市場に対するパナマ、アジア市場に対するシンガポールのように税制面でも優遇されます。
以上の方法が難しい場合は、FBLの取得が必須となります。
FBLの取得の方法は、事業開発局(Department of Business Development)への登録、そして、租税事項として、歳入局(Revenue Department)へ登録をします。
タイの有限責任会社(LLC)は、民商法典(Civil & Commercial Code)により規定され、最低3名の株主及び1名の取締役が必要です。100%独資で立ち上げ可能です。但し、業種によって外資の過半数以上の株所有が制限されている為、多くの場合、株式の最低でも51%は、タイ国民によって所有されることが求められます。25%以上の資本金が、会社登記時に支払われていることが必要です。タイ人株主が過半数以上のLLCでは、最低資本金は1USDとなります。
タイのLLCで、外国人従業員を雇う場合、制限業種では、最低94000USDの資本金を、それ以外の業種では、最低63000USDの資本金が必要になります。
タイの制限業種は広範囲に及びます。例として、武器関連のように国防に関わることから、新聞、ラジオ、テレビ事業、農業、林業、漁業、タイのハーブ関連事業、タイの骨董品取引、ブッダの形の成型、土地取引、タイの工芸品、絹製品、精糖、塩の製造、岩塩掘削などとなります。詳細はタイ投資委員会の公式ページ(英語)をご覧ください。
タイで株式会社(公開有限会社)を設立する場合、公開会社法により規定され、最低15人の株主及び最低5人の取締役が必要になります。当該株主及び取締役の半数はタイ国民であることが求められます。最低資本金は、1USDです。
タイで上場する必要はありませんが、もし、タイ(タイ証券取引所、SET)で上場する場合は、資本金は930万USDで、日本のマザーズに相当するオルタナティブ投資市場(MAI)に上場する場合は、最低払い込み済の資本金は、62万2000USDとなります。
最長で5年の事業を行うためであれば、FBLを取得し、支店の開設が認められています。
支店でもFBLは更新可能ですが、クライアントとしては、毎5年のFBL更新は煩雑であり、更新後から次の更新までの費用担保のため15万6千USDの送金が必要になること、その上、VAT登録番号、納税者番号、商業登録証明を取得しなくてはならず事業運営上の大きな負担となります。
タイにおける、外資企業は、駐在員事務所設立ができます。駐在員事務所の代表は、タイ国民である必要があります。
但し、タイ国内で直接売り上げを立てることは認められていません。
駐在員事務所が出来ることは、
1)市場調査、
2)本社の事業の販促活動、
3)タイで製品またはサービスを購入する
4)タイで購入又は製造された製品の量及び品質を管理すること
となります。
駐在員事務所は、タイで法人税の対象となりませんが、法人税ID番号を取得し、所得税申告書を提出し、監査された財務諸表を歳入局へ提出する義務があります。